水面に反射する日の光も、眼前に広がる碧さも少しだけ薄暗く見える。


それはあたしの心が濁っているから?


かれこれもう1週間くらい鬱々と悩んでいる。
自分でも分かっているのに気持ちを切り替ることが出来ない。
せっかく日常を離れて犬夜叉と二人でいられるのに―――。




試験も終わっての連休、犬夜叉とは2度目の旅行。
二人だけでのんびり羽を伸ばしたい、あたしの我侭を聞いてくれて
最近人気だというこの温泉旅館に連れて来てくれた。




ここで、何か変わるのだろうか。













double heart














「なんだよ、風呂まだ行ってなかったのか?」
「あ、うん・・・・・・」
「おまえ・・・・なんか変だな。いつもに増してボケーッとしてるぞ」
「いつもって失礼ねっ。・・・・・べ、別になんでもないわよ。行ってくるわ」
「一緒に入るか?」
「い、や、よっ」


おどけて舌を出してみせたけど自然と頬に赤みが差す。


せっかく二人きりなんだから―――。


ここは雑音も耳に入らない。
変なこと考えないようにしよう。
今は犬夜叉のことだけ・・・・・・。










「ふぅ・・・・良いお風呂だったな。・・・・・・・犬夜叉?ロビーでなにやって・・・・あ、れ?」


あの人・・・・・何でこんなところに・・・・・。


こういうときの条件反射っていうのか、思わず隠れてしまう自分が悲しい。
近くにいる団体客の喧騒で声は聞こえない。



あたしの視線の先には犬夜叉と、綺麗な金色のショートヘアの女性。
着慣れないだろう浴衣の袖から白くて細い腕が犬夜叉の袖に触れるように伸びている。




噂には聞いていた。
数日前に犬夜叉と同じゼミに来た留学生の女の子。
変わった名前ではっきりと覚えている。
そして彼女が犬夜叉のことを気に入っているらしい、という『いかにも噂』な情報も混ざっていて―――。



あたしが今沈んでる、原因。



「初めて見たわ・・・・・・。なんでこんなところで会うかなぁ。・・・・・・部屋戻ろ・・・・」



何でもない。
そう言い聞かせてる。


ただの偶然。
そう思い込もうとしてる。


・・・・・あたし何のために来たのかな・・・・・。








「おい」
「・・・・・はぁ」
「かーごーめーっ」
「・・・・・何よ」
「聞こえてんなら返事しろ。何ふてくされてんだよ。飯、きたぞ?」
「食べたくない・・・・・」



振り返らずに返事を返す。
犬夜叉の顔を見たくなかったし、なんとなく今のあたしの顔も見せたくなかった。
そんなあたしの心境を露も解さず、すぐ後ろで苛立つ声が続く。



「どうしたんだよ?んなとこいねぇで飯食おうぜ」
「・・・・・犬夜叉、今日ここに来ること誰かに話した?」
「あー?話したっていうか、ここの旅館が良いっていうのは教えてもらったけど」
「あの留学生の人に?」
「ああ、かごめも会ったのか?温泉マニアなんだと。すげぇ詳しくて」
「一緒の日に来るって決めたの?」
「んなわけねぇ。偶々だろ」
「・・・・・・・・偶々・・・ねー」
「あんだよっ。・・・・・なに突っかかってんだよ」




このままだと・・・八つ当たりしちゃう。
頭冷やしてこないと・・・・。



「ちょっと風に当たってくるわ」



ダンッ―――。



部屋の入り口、かごめの前を通せんぼでもするように犬夜叉の片足が高々と渡される。


「待てよ」
「なっ・・・・・何よ。行儀悪いわよ」
「っせえ」
「足どけて」
「ちゃんと話しろ。なんか怒ってんだろ?」
「・・・・・・・・」
「だんまりかよ・・・・・・じゃ、こっちに聞く」
「え・・・・・・きゃあっ」



気が付いたら木目の天井が見えていた。
押さえつけるように覆いかぶさる犬夜叉の重みを全身から感じる。


「やっ・・・・・ん、んっー」


塞がれた唇。
いきなり舌を絡められて、温泉のせいでまだ熱を持っている体がさらに熱くなる。
肌蹴た浴衣の裾を割って犬夜叉の体が入り込んできた。


「まだ・・・・言わねぇのか?」
「っ・・・い、言いたくない・・・・・・」
「ふーん。なら・・・・・・」
「っつ・・・・だ、めっ」



煌々と照らされる青白い電灯がまぶしい。
窓だって開いている。
こんな状況でなんて―――。



「ちょっ・・・・・待って・・・・。わ、分かったわよ」
「言う気になったか?」



名残惜しそうにも見えたけど、ようやく退いた犬夜叉が手を引いて起こしてくれた。
乱れた襟元と裾を直す。
大きくなる心臓の音を消すように胸に手を置いて一呼吸してから話を始めた。



「・・・・・・・彼女が・・・ミラノさんが来てるの偶然じゃないと思うわ・・・きっと、犬夜叉のこと気にいって・・・・」
「は?だから偶然だろ。あいつと話したのなんて数えるほどだぞ。それに」
「でもっ。彼女のほうは好意を持っているかもしれないじゃない?それで、今日来たとか」
「あのなー、いいか?あいつ自分の国に婚約者がいるんだぞ」
「・・・え?」
「そういうこと。おれは関係ねぇよ。ただの温泉好きだろ」



ただの温泉好きって・・・。
さっきのロビーで見た犬夜叉と彼女の雰囲気はそんな風には見えなかったけど、
彼女に婚約者がいると聞いて心の凝りが少し溶けた。

あたしって犬夜叉のことに関してはどうしてこんなに狭量になってしまうのか・・・・・。



「・・・・・そうだったの・・・・。はぁ・・・・なんか、ヤキモチ妬き損みたい」
「まったくだ。一人で盛り上がりやがって。せっかく旅行来てんだぜ?」
「そうよね・・・・ごめんね。あ、そうそう・・・・・ご飯食べよっか」
「・・・・・後でいい。それより・・・・・」
「ま、待ってっ。せっかくの、料理じゃない?」
「ホントに旨い料理ってのは冷めても旨いんだぜ」
「何それっ・・・・ちょっ・・・・っん」
「あと言っとくけど、おれ洋モノには興味ねぇから」
「もう、ばかっ。・・・・ぁっ」



くす、と笑って低く囁かれて抵抗する気も失せてしまった。


今まで悩んでたのがバカみたい。
そう、こんな顔を見せてくれるのはあたしだけ。
気がつくのに時間がかかったけど、この旅行のおかげかもしれない。


犬夜叉の胸元に顔を埋めて思わず顔が綻んだ。
我ながら、現金だなって思う。














-Dear Miranosama Congratulations 1st Anniversary!-












06.06.01 written by kika





みらの様へ。
大っ変遅くなりました(土下座)きっともうリクもお忘れでしょうね・・・・。
頂いたリクキーワードは、パラレル大学生、温泉、ミラノ、犬かご、深まる愛。
あと、ギャグ!一見切な系で、ギャグ、というお話も出てたので出だしは切なっぽく(苦笑)
成分的には
80%はニセモノ犬かごでギャグ。
10%は鬱なかごちゃん。
10%はチラリズム。
ですかね^^;
こんなんで良いのでしょうか。こんなんで萌えられる?
しかもミラノさんあんまり犬と絡んでないし(爆)ごめんね、もっと絡みたかったよね;
犬にただの温泉好きって言われてるし(ぎゃ、すみませ・・・殴)
謝りどころだらけですが、ご笑納頂けると有難いです^^ゝ
ではではv

 

**管理人コメント**

「PLATINUM」のきか様から、拙宅の1周年祝いに小説をいただきましたv

ありがとうございますっ!!きかさん!!すごく嬉しいっ
リク、覚えていますとも!!
『大っ好きなきかさんのパラレル大学生で、イタリアからの留学生・ミラノが、犬君にちょっかいを
出して、かごちゃんにやきもち妬いてもらいたい。そして、犬かご愛は深まり
ミラノは、散々引っ掻き回した挙句、さっさとフィアンセの元に戻る(爆)』…でしたね?

やたっ!!犬夜叉と話してるのね(ミラノが)v…あれ?チュウは…やっぱだめか…^^
足で通せんぼする犬君に萌えましたvv…洋モノには興味ないんだ…って、ミラノ、エ●ビデオ扱い?

…成分に、ミスリルが入っておりませんが、みつかりませんでしたか(←突っ込むの待ってたでしょ)?
最初から最後まで、きかさんのテイストが効いてて、もう、感激です!!

…あ、温泉好きは、本当の事ですから…v

すっごくおっしゃれ〜で、かわいいお話を、本当に、ありがとうございましたvv
宝物ですvv


きかさんのサイト『PLATINUM』様へは、リンク集からどうぞvv

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