第2話『かごメイド』
 

「…すごいお屋敷…」

車窓から手入れの行き届いた庭を眺め、かごめは溜め息をついた。

古めかしいアーチ門をくぐったのは、5分ほど前のことか…。
…まだ建物に辿りつかないとは、一体どれだけ広いのか…。


かごめがこの屋敷で働く事が決まったのは、つい先日の事だった。
メイド仲間の間でも、この屋敷の事は有名で、中でも、その所有者である若き兄弟の噂で
もちきりだった。…その長い銀髪と、類稀ない容姿。おまけに資産家と言う事でその屋敷で働く事を
誰もが夢見ていた。

そんな時、降って湧いたように突然かごめに指名がきたのだ。

仲間達の羨望を一身に受け、戸惑いながら迎えの車に乗り込んだが、かごめは正直気後れしていた。


「さ、着きましたよ、ご主人様がお待ちです。」


ドアを開けた運転手に促されて、かごめは車外へ降り立った。

…見上げるような大きな木製のドアには美しい装飾が施されていた。
かごめは、一呼吸おいて、その重厚なドアノブにゆっくりと手をかけた。

一歩足を踏み入れ、思わず声を上げそうになる。


まるで映画に出てきそうな、赤い絨毯の敷き詰められたホールは大理石の吹き抜けで
その先は二階へと続く階段があり、豪華なシャンデリアと調度品の数々に目を奪われる。


「…コホン、こちらですぞ。」


声のした方へ振り向くと、執事らしい初老の男性が奥のドアの前で、手招きしている。


「…最初に言っておきますが、お気をつけなされませ。」


その執事らしき男がかごめに耳打ちする。

「…はあ…美術品には、触れないように、します…。」

男はかごめの控えめな態度に、とんでもないという風に首を横に振る。

「違います。ご主人様の事です。兄上様は大丈夫なのです。…あまり周りに関心が
おありでないので。…問題は、弟君の、犬夜叉様です。少々…好奇心が旺盛といいますか
…やんちゃといいましょうか…あなたをご指名されたのも、犬夜叉様で、メイドスタッフの
写真を見て即お決めになられて…。あの…実は前にいたメイドも…」

バターーーンッ!

突然乱暴に開け放たれたドアの音に、かごめは身体を硬くする。


「人聞きの悪ぃ事言ってんなよ、冥加ジジイ。おれが地獄耳だって忘れたのかよ」

「…犬夜叉様…」

「…へぇ、おめぇが、かごめか。…ふーーん…。」


犬夜叉と呼ばれたその男は、かごめを無遠慮に上から下まで見つめた。
その視線はまるで値踏みするかのようで、かごめは急に不安になった。


「…ご主人様に、ご挨拶もなしかよ?けっまぁいい…。退屈してたとこだ。
…さあて、ゲームの始まりだぜ…。」

犬夜叉の目が怪しく金色に光ったのを、かごめは見逃さなかった。

まるで、危険を知らせる警鐘のように鼓動が早くなる。
…頭の片隅で、先ほどの執事の言葉が思い出される。


『前にいたメイドも…』


その先の言葉の意味が、今のかごめには、わかるはずもなかった…。

 


 〜管理人のコメント〜

今度はメイドさんか…。だんだんと、怪しくなってきてます。
本人的には、かなり楽しいです。
ちょっと、リクも入ってますしv

不完全燃焼な尻切れトンボ話ですが、こちらも
某様の某所で引き継いでいただいておりますv
(アチラが楽しみで楽しみで…vv)

…苦情はご勘弁くださいね。
 

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