White Snow

 

 

30000hitキリリク朔文

「あれかし庵」みらのさまへ捧げます♪

 

 

 

 

 

街に降る白い雪は、恋人達の指をそっと絡ませてくれる

 

 

街にきらめくイルミネーションは、恋人達がそっと寄り添うきっかけをつくっ

てくれる

 

 

互いの手の温もりを感じながら

 

 

互いの口唇の温もりを感じながら

 

 

恋人達は、空から降る白い雪を優しく見つめる

 

 

 

 

 

 

今朝からずっと降り続いている白い雪が、暗く弱々しい空の光に反射して意外

なほど小屋の中は明るく感じられた

 

 

しかし、その明るさとは裏腹に、犬夜叉達のいる小屋の中は、ずんっとした重

苦しい空気に包まれていた

 

 

「なあ、かごめ、本当に二週間も帰ってこれんのか?」

 

 

大きなリュックに慌しく荷物を詰め込んでいるかごめの背中で、七宝が甘える

ようにもたれ掛かりながら聞いた

 

 

今朝から、何度も同じ事を聞いては、その度に寂しそうな表情を浮かべてスカ

ートの裾を引っ張るその仕草にかごめの胸が痛んだ

 

 

「ごめんね、七宝ちゃん」

 

 

「私の家の、神社のお手伝いをしなくちゃいけないから・・・」

 

 

「けっ、かごめが行きたいって言ってるんだから、行かせてやればいいじゃね

えか!」

 

 

イライラした犬夜叉の大きな声が、小さな小屋の薄い板張りの壁をびりびりと

震わせた

 

 

言葉とは裏腹な態度をとる犬夜叉に、俯いたままのかごめがぽつりと呟いた

 

 

「別に、喜んで行くわけじゃないんだけどな・・・」

 

 

えっ?

 

 

かごめの思いがけない返事に、犬夜叉が慌てて振り返った

 

 

な、なんだよ?

 

 

いつもなら「おすわり!」の一言で、その場が終わっちまうのに・・・

 

 

かごめ、あんなに涙をためて・・・

 

 

ズキンッ!

 

 

雪が降っているからと、みんなと小屋の中で別れたかごめは、小さな足跡を

点々と残しながら井戸に向って歩いていった

 

 

お、おいっ、なんだよ?

 

 

かごめ、ひとりで行っちまったぞ・・・

 

 

みんなで、骨喰いの井戸まで見送りに行くんじゃねえのか?

 

 

しょうがない奴ですね・・・

 

 

呆然としている犬夜叉を無理やり立たせた弥勒は、小さな窓の外に広がる暗い

空を見せた

 

 

「弥勒、何するんだよ?」

 

 

「犬夜叉、おまえは本当に言葉が足らないですね?」

 

 

「ほら、あの暗い空を見てごらんなさい」

 

 

「雪が強くなってきましたよ?」

 

 

「私と楓様の結界が張ってあるとはいえ、空から降る雪にまでは効果はありま

せん」

 

 

「急いで、かごめさまをお見送りしてきなさいな・・・」

 

 

「・・・」

 

 

弥勒の後ろにある珊瑚と七宝の視線を背中に感じながら、犬夜叉は小屋の扉を

バタンと閉めた

 

 

「ねえ、犬夜叉、凄い勢いで走って行ったよ?」

 

 

「本当は、かごめさまと片時も離れたくないくせに、あんな悪態をつくと

は・・・」

 

 

「素直じゃないですねえ♪」

 

 

「大丈夫かな、あのふたり喧嘩しないよね・・・?」

 

 

「ははっ、聞くだけ野暮というものです♪」

 

 

雪で白くぼやけた視界の先に、かごめが担ぐ大きなリュックが見えてきた

 

 

いた、かごめだ!

 

 

かごめ、頭に雪が積もっちまって・・・

 

 

「かごめ、風邪ひいちまうぞ?」

 

 

「犬夜叉、来てくれたんだ?」

 

 

白い雪で覆われた骨喰いの井戸の手前でかごめを見つけた犬夜叉は、涙で潤ん

でいるかごめの瞳にまた胸が痛んだ

 

 

「さ、さっきは悪かったよ・・・」

 

 

かごめの髪に降り積もった雪を払いながら、犬夜叉は冷たくなったかごめの身

体を抱き締め頬を寄せた

 

 

「ううん、いいのよ♪」

 

 

「私も、犬夜叉の気持ちはわかってるつもりだから・・・」

 

 

犬夜叉の胸に顔を埋めて、寂しそうにそう話すかごめのくぐもった声が、やけ

に遠くに聞える気がする・・・

 

 

もうすぐ、かごめはこの井戸を通っていなくなるのか?

 

 

今まで、二週間もかごめと離れた事など一度もなかった犬夜叉にとって、この

別れは永遠よりも遠くに感じてしまう

 

 

やっぱり、かごめと離れたくねえ・・・

 

 

もしかしたら、もうこっちに帰って来ないんじゃねえかって不安になっちまう

よ・・・

 

 

でも・・・

 

 

ぐいっ!

 

 

冷たいかごめの口唇に想いの丈のくちづけを落とした犬夜叉は、再びその華奢

な身体を強く抱き締めた

 

 

犬夜叉の胸に置いたかごめの両手が背中にまわり、やがてつま先立ちのままで

犬夜叉の首に絡まってゆく

 

 

互いの口唇から漏れ出た切ない吐息が、淡く白い息となって辺りの景色を曇ら

せた

 

 

「いぬ・・やしゃ・・・?」

 

 

「・・・」

 

 

「二週間・・だな・・・?」

 

 

「えっ?」

 

 

「二週間経ったら、また、かごめはこっちに帰ってくるんだよな?」

 

 

「うん・・・」

 

 

「わかった・・・」

 

 

「俺は、こっちで待ってるから、しっかり神社の手伝いをしてこいよ・・・」

 

 

いっそう強く抱き締める腕の中で、かごめが犬夜叉に思いがけない事を言った

 

 

「ねえ、犬夜叉は、私と一緒に来てくれないの?」

 

 

「へっ?」

 

 

「だ、だって、俺はこっちで留守番なんだろ?」

 

 

「私、そんな事、ひとことも言ってないよ?」

 

 

「えっ、ええっ?」

 

 

「おじいちゃんがね、また腰を痛めちゃったの・・・」

 

 

「だから、年末の大掃除に犬夜叉に来て欲しいって、おじいちゃんが言ってた

から」

 

 

「大晦日とお正月の三が日は大忙しだけど、それまでは夜も一緒に居られるん

だけどな♪」

 

 

一緒にって・・・

 

 

「おれっ、かごめの時代に行ってもいいのか?」

 

 

「うん・・・」

 

 

「よる、よっ、夜も・・か・・・?」

 

 

「うん・・・」

 

 

「ま、毎晩、かごめの部屋に・・居ても・いいのか・・・?」

 

 

「うん・・・♪」

 

 

「に、二週間も・・か・・・?」

 

 

こくりっ♪

 

 

頬を赤らめて小さく頷くかごめの隣に、遠い目をして寒い空を見つめる少年が

いた・・・

 

 

ははっ・・・

 

 

何だよ、俺ひとりで盛り上っちまってたのか・・・?

 

 

恥ずかしいぜ・・・

 

 

「犬夜叉どうしたの、顔が真っ赤だよ?」

 

 

 

 

 

どた、どた、どたっ♪

 

 

ばたんっ!

 

 

「さあ、おまえら、こんな所でグズグズしている暇なんかねえぞ!」

 

 

「さっさと、冬ごもりの支度をしちまおうぜ!」

 

 

「な、何ですか、いきなり、なに張り切ってるんですか?」

 

 

「かごめが、向こうで俺に頼みてえ事があるんだってよ♪」

 

 

「俺、明日から二週間こっちには居ねえからな!」

 

 

「そ、そうですか、それは我々もとっても助かります・・・」

 

 

「おい弥勒、なんか言ったか?」

 

 

「い、いえっ、何も言ってません!」

 

 

「だから、この小屋の冬支度を今日中に終わらせちまう事にしたんだ」

 

 

「冬支度って、もう真冬の真っ最中なんですけど・・・」

 

 

「仕方なかろう・・・」

 

 

「朔の身体にでもならぬ限り、あやつは寒さなんぞ微塵も感じないからのう

♪」

 

 

「鈍いんじゃろうて・・・」

 

 

「どこもかしこも♪」

 

 

「七宝、なんか言ったか?」

 

 

「へっ、お、おら何も言っておらぬぞ!」

 

 

耳だけは鋭いわい・・・

 

 

「それなら、小屋の裏に薪をたくさん積んで置いてくれませんか?」

 

 

「この冬は、かなりな寒さになるみたいですから」

 

 

「薪だな、よし、まかせておけ!」

 

 

「散魂鉄爪っ!」

 

 

ずしーんっ!

 

 

バキバキバキッ!

 

 

「犬夜叉、や、やめなさい!」

 

 

「裏山を、みんな削ってしまう気ですか?」

 

 

「ええい、面倒だ、風のきずっ・・・!」

 

 

ゴキンッ!

 

 

「やめろと言っているでしょうに!」

 

 

「ばかだね、犬夜叉、法師様に殴られてるよ・・・」

 

 

「だめじゃ、完全に舞い上がっておる・・・」

 

 

 

 

 

 

「あら、かごめ、随分早くに帰ってきたのね?」

 

 

「ママ、ただいま♪」

 

 

「どうしたの、何だかご機嫌じゃない?」

 

 

「えっ、そ、そんな事ないわよ♪」

 

 

「私、ちょっと、二階の部屋を片付けてくるね!」

 

 

がたんっ!

 

 

「よいしょっと・・・」

 

 

「うわっ!」

 

 

なんだ、さ、寒いぞっ!

 

 

骨喰いの井戸を登ってきた犬夜叉を、天窓から吹き込むたくさんの白い雪が出

迎えてくれた

 

 

漆黒に変化した朔の髪のところどころには、雪の結晶が髪飾りのようにキラキ

ラと輝きながら纏わり付いていた

 

 

こっちの時代も、めちゃくちゃ寒いじゃねえかよ・・・

 

 

雪を払い落とすためなのか、それとも現代の寒さがそうさせたのか、犬夜叉は

堪らず身体を身震いさせた

 

 

へっくしっ!

 

 

朔の身体には、この時代の寒さもきついもんだな・・・

 

 

さあ、急いで片付けを終わらして、今夜はかごめとゆっくりするかあ♪

 

 

「なあ、ママさん、かごめは何処にいるんだ?」

 

 

「あら、犬夜叉くん、いらっしゃい♪」

 

 

「いま、おじいちゃんと、倉庫から荷物を運んでいるんじゃないかしら?」

 

 

「そうか・・・」

 

 

へっくしっ!

 

 

「あらあら、もしかして風邪ひいてるの?」

 

 

「いやっ、良くわからねえけど、やたらに寒気がするんだよ・・・」

 

 

ずずっ!

 

 

「そうだ、ちょっと待っててね♪」

 

 

「もう人間になってるんだから、この風邪藥が効くかもしれないわよ?」

 

 

ふーん?

 

 

「変な色した玉だな・・・」

 

 

「噛まないで、お水と一緒に飲んでね?」

 

 

ごくりっ!

 

 

「あっ、犬夜叉来てくれてたんだ♪」

 

 

「おおっ、いつもすまんのう!」

 

 

「いいんだよ」

 

 

「それより、腰が痛てえんだったら、そこでおとなしく座っていてくれよ」

 

 

「後は、俺がやるからよ!」

 

 

「じゃあ、犬夜叉、あとお願いね?」

 

 

「おう、まかせておけ♪」

 

 

「これで、終りなのか?」

 

 

「いやー、思ったより早く終わってしまったなあ!」

 

 

「いや、助かったよ、ありがとう」

 

 

「次は、何をやればいいんだよ?」

 

 

「まあまあ、そんなに急がんでも良いじゃろう♪」

 

 

「それって、さっき神棚にあげた御神酒の残りじゃねえか?」

 

 

「どうじゃ、一杯やらんか?」

 

 

「い、いいのかよ?」

 

 

「こんな、神聖な場所で飲んじまって・・・」

 

 

「日が暮れて人間に変化してしまっておるから、随分と寒さが身にしみるじゃ

ろう?」

 

 

「そうなんだよ!」

 

 

「いつもの朔なら、なんて事ねえんだけど、この冬の寒さだけは苦手なんだ

よ・・・」

 

 

「ちいせえ頃の朔の冬は、それこそ地獄の寒さだったからな・・・」

 

 

「よし、それならぐいっと飲みなさい!」

 

 

「身体が温まるぞ♪」

 

 

「そ、そうか?」

 

 

「じゃあ、一杯だけ♪」

 

 

ぐいっ!

 

 

「おおっ、良い飲みっぷりじゃのう!」

 

 

ぷは〜っ♪

 

 

「まあ、じいさんもぐいっとやってくれよ♪」

 

 

「いや、悪いのう♪」

 

 

ぐいっ♪

 

 

「何だか、向こうが騒がしいわね?」

 

 

「ほんとね、凄い荷物の量だったから、なかなか片付かないでいるのかしら?」

 

 

 

 

 

 

へっくしっ!

 

 

ううっ、寒いぜ・・・

 

 

それに、やたらと身体が痛てえ・・・

 

 

こんな堅い板の間で寝ちまったからなあ

 

 

んっ?

 

 

きょろきょろっ・・・

 

 

あれっ、じいさんがいねえ?

 

 

何処に行っちまったんだよ?

 

 

しょうがねえな、俺もかごめの部屋に戻るとするか・・・

 

 

てってってっ・・・♪

 

 

あれっ!

 

 

俺、なんで四つ足で歩いてるんだ?

 

 

それに、やけに目線が低いような・・・

 

 

今夜は朔だから、俺は人間に変化してるんだよな?

 

 

これじゃ、まるで・・いぬ・・・

 

 

だだだだっ!

 

 

犬夜叉は、神殿に祭られている鏡に映し出された自分の姿に腰を抜かしてしま

った

 

 

「こ、子犬・・だ・・・」

 

 

俺の目の前に、銀色の身体をした子犬がいる・・・

 

 

そ、そうだ、俺の衣は、鉄砕牙はどこだ?

 

 

酒の瓶も、つまみもねえ?

 

 

もしかして、じいさんがみんな持って帰っちまったのかよ・・・

 

 

とにかく、かごめの部屋に戻らねえと!

 

 

かごめの部屋に辿り着いたものの、小犬となってしまった身体のままでは、部

屋の明かりを点ける事すら出来なかった・・・

 

 

犬夜叉は、かごめの勉強机のイスの上で、ひとり(一匹)思案に暮れていた

 

 

いったい、どういう事なんだ?

 

 

頭が変になりそうだよ・・・

 

 

酒を飲んで酔っ払ったままで朔になると、子犬になっちまうのか?

 

 

まさか・・な・・・

 

 

「・・・」

 

 

ああっ、もうっ!

 

 

「冗談じゃねえぞ!」

(わんわんっ!)

 

 

「これじゃ、今夜はかごめを抱けねえじゃねえか!」

(わんわんわわ〜ん♪)

 

 

「弥勒にも珊瑚にも七宝にも、誰にも邪魔されねえ貴重な朔の夜だっての

に・・・」

(きゅう〜ん・・・)

 

 

とんとんとんっ♪

 

 

げっ、かごめが階段を上がってきたのか?

 

 

と、とにかく、この姿を隠さねえと!

 

 

かちゃり!

 

 

「犬夜叉、もう少しで晩御飯だからね♪」

 

 

「あれっ、犬夜叉、いない?」

 

 

火鼠の衣も、鉄砕牙もみんな置いてある・・・

 

 

「窓が開いてるけど、着替えて外に出たのかしら?」

 

 

「まあ、今夜は人間に変化してるから、そんなに心配はいらないわね♪」

 

 

あっ、危なかったぜ?

 

 

いったい、どうしたら良いんだよ・・・

 

 

かごめが部屋を降りてゆくのを確かめた小犬(犬夜叉)は、誰にも会わないよ

うに注意深く玄関から外に出た

 

 

ぶみゅあ〜っ?

 

 

げっ、かごめの家の飼い猫じゃねえか!

 

 

『お、俺だ、犬夜叉だ!』

(わんわんっ!)

 

 

ぶみゅあ〜♪

 

 

ぺろっ!

 

 

かごめの家で飼われている、ぶよという大きな猫には銀色の身体をした子犬の

正体がわかったのか、ほっぺたをひと舐めするとそのまま家の中に入っていっ

 

 

危なかったぜ・・・

 

 

とにかく、いったん、あの井戸をくぐり抜けて弥勒に相談してみるか?

 

 

てってってっ・・・

 

 

な、なんだよ、こうしてみると、ものすごくでかい井戸だぞ?

 

 

それより、この身体じゃ絶対に登れねえじゃねえかよ・・・

 

 

ああっ、もう!

 

 

なんで、こんなになっちまったんだ?

 

 

「・・・」

 

 

もしかして、酒か・・・?

 

 

たしか、じいさんと酒を飲んでて、目が覚めたらこんなになってたんだよな?

 

 

でも、酒なんか、今までも朔の夜にしこたま飲んでたけどな・・・

 

 

あとは、ママさんに貰って飲んだ、変な色した玉が原因かも知れねえ?

 

 

でも、別にあれを飲んでも、さっきまでは何ともなかったし・・・

 

 

「・・・」

 

 

「もしかして、両方を飲んじまったからなのか?」

 

 

「・・・」

 

 

それなら、どっちかの効き目が消えれば良いんじゃねえのか?

 

 

「よしっ、まず、酒の方からだ!」

 

 

酔いが醒めれば、元に戻るかも知れねえかもな?

 

 

そこらじゅうを走りまわれば、きっと早く酔いも醒めるはずだ!

 

 

てってってっ・・・♪

 

 

てってっ・・てっ・・・

 

 

ぜーっ、ぜーっ!

 

 

だ、ダメだ、このちいちぇえ身体じゃ、すぐに息が切れちまう・・・

 

 

神社の石段を、何度も昇り降りをしている銀色の子犬はやがて、一番下の石段

にへたり込んでしまった

 

 

「あらっ、可愛いワンちゃんね♪」

 

 

へなって動けないからか、子犬(犬夜叉)は不覚にも傍を通りかかった少女に、

ひょいと抱き上げられてしまった

 

 

「な、何だよ、俺に触るんじゃねえよ!」

(きゃんきゃんっ!)

 

 

「捨て犬かしら?」

 

 

「この子犬、とっても可愛いわ♪」

 

 

「家で飼っても良いか、ママに聞いてみようかな?」

 

 

「ねえ、みらの、急がないとアルバイトの説明に遅れちゃうよ?」

 

 

「あっ、ごめん♪」

 

 

「ねえ、このワンちゃんも連れて行って良いかな?」

 

 

「後で、家で飼っても良いかママにメールしたいんだ♪」

 

 

「もう、そんな事してる場合じゃないでしょう?」

 

 

「ほら、急ぐわよ!」

 

 

「あっ、みらの、絵里、由加いらっしゃい♪」

 

 

「かごめ、遅れてごめんね?」

 

 

「ううん、いいのよ♪」

 

 

「無理を言って、神社のお手伝いをして貰うんだもの」

 

 

「あれ?」

 

 

「ねえ、みらの、その子犬どうしたの?」

 

 

「この、神社の下の石段の途中で拾ったのよ」

 

 

「あんまり可愛いから、お家で飼おうかなと思って、ここまで連れてきちゃっ

た♪」

 

 

「わあっ、本当に可愛いワンちゃんね?」

 

 

「それに、綺麗な銀色の毛並み♪」

 

 

「でも、どっかでみたような・・・」

 

 

どきっ!

 

 

「ふふっ、そんなわけないか♪」

 

 

「ねえ、玄関に紐で繋いでおいて良いかな?」

 

 

じょっ、冗談じゃねえぞ!

 

 

酔いが醒めたら、一発で俺だって事がばれちまうじゃねえか!

 

 

「あっ、こら、暴れちゃダメでしょ?」

 

 

ぎゅううっ♪

 

 

げっ、そんなに強く抱いたら、この女の胸が俺の顔に・・・

 

 

「ねえ、みらの、このワンちゃん、ハナ血出しちゃってるよ!」

 

 

「や、やだ、強く抱き過ぎちゃったかしら?」

 

 

「でも、何だか、幸せそうな顔して気絶してるわよ?」

 

 

 

 

 

 

かじかじっ・・・

 

 

もう、顎が・・疲れちまった

 

 

それに何だよ、この頼りねえ細い牙は・・・

 

 

下手すると、ぽきっと折れちまいそうだぜ?

 

 

それにしても、この俺さまの首を紐で結びやがって!

 

 

俺の首に巻いていいのは、かごめの両腕だけだって決まってるんだぞ♪

 

 

ちくしょう、こんな姿じゃなかったら今頃はこたつで暖まりながら、台所でメ

シを作ってるかごめの後ろ姿を見てた筈なのに・・・♪

 

 

そんな不埒な事を悔やみながら、犬夜叉は一心不乱に首に繋がれている細い紐

をかじっていた

 

 

かじかじっ!

 

 

ぱらりっ・・・

 

 

や、やっと紐がほどけたぜ・・・

 

 

このままだと、またかごめ達にみつかっちまうぞ?

 

 

きょろきょろ・・・

 

 

とにかく、玄関の外に逃げちまおう!

 

 

びゅうーっ!

 

 

げっ、外はめちゃくちゃ寒いじゃねえかよ?

 

 

仕方ねえ・・・

 

 

酔いが醒めるまで、二階のかごめの部屋に隠れていた方が良さそうだぜ

 

 

はあ・・・

 

 

俺、元の身体に戻れるのかな?

 

 

かごめのベッドの上で、小さく丸まっている銀色の毛並みが、やがて規則正し

い呼吸に合わせて上下に揺れ出した

 

 

暖かい・・・

 

 

かごめの匂いがしてる?

 

 

気持ち良いな・・・♪

 

 

くーくーっ・・・

 

 

「それじゃ、みらの、絵里、由加、大晦日からお願いね♪」

 

 

「まかせといて、かごめも忙しいだろうけど、少しは休んでおくんだよ?」

 

 

「うん、ありがとう♪」

 

 

「あれっ、紐が解けちゃってるわ?」

 

 

「ワンちゃん、何処に行っちゃったのかしら?」

 

 

「きっと、この神社の何処かにいると思うから、見つけたら電話するわね?」

 

 

「うん、お願いね♪」

 

 

「さあ、私もお風呂に入って温まろうっと♪」

 

 

でも、犬夜叉、まだ帰って来てないのかな?

 

 

そんなに、遠くには行ってないと思うけど・・・

 

 

きっと、晩御飯までには帰ってくるわよね♪

 

 

バスタオルと着替えを取りに部屋の明かりを点けたかごめは、さっきまで玄関

で寝ている筈の子犬をベッドの上でみつけた

 

 

「あら、みらのが連れて来たワンちゃん、私のベッドで寝ちゃってたのね♪」

 

 

「あららっ、身体中が砂だらけじゃない!」

 

 

「そうだ、一緒にお風呂に入ろっか♪」

 

 

んっ・・・

 

 

ここ、どこだ?

 

 

うわっ!

 

 

かごめ、おまえ、なに服を脱いでるんだよ!

 

 

ま、まさか、真っ裸になるつもりなのか?

 

 

「あら、ワンちゃん、目が覚めたの?」

 

 

「今から、一緒にお風呂に入りましょうね♪」

 

 

ふっ、風呂だって?

 

 

確かに、ここはかごめの家の風呂場だ・・・

 

 

よいしょっ♪

 

 

するるっ♪

 

 

うわわっ、かごめ、おまえ何て姿になってるんだ?

 

 

すっぽんぽんじゃねえか・・・

 

 

ごくりっ♪

 

 

「はい、抱っこしましょうね♪」

 

 

ひょいっ!

 

 

ば、ばか、何するんだよ?

 

 

お、おまえの柔らけえナマ乳が、俺の身体にくっついて・・・

 

 

駄目だ、もうハナ血が出そうだ・・・

 

 

もわもわ〜んっ♪

 

 

何だよ、かごめの裸が見れると思ったのに、湯気で何にも見えねえじゃねえ

か?

 

 

「はい、ワンちゃん、後ろを向いてね♪」

 

 

きょろきょろとする犬夜叉の背中に、かごめが愛用しているシャンプーがたっ

ぷりと塗られた

 

 

うわっ、シャンプーが冷てえっ!

 

 

うああっ♪

 

 

何だか、背筋がゾクゾクするぜ!

 

 

泡だらけのかごめの指が身体中を這い回る感触が、やたらに気持ちいいじゃね

えか♪

 

 

こ、これっ今度、犬じゃねえ時に、もう一度やって貰えねえかなあ♪

 

 

暖かいお湯の気持ち良さに負けてしまったのか、子犬になった犬夜叉はかごめ

に身体を預けると、小さな瞳をじっと瞑っておとなしくなった

 

 

「ほんとに、綺麗な銀色の毛並みなのね?」

 

 

「・・・」

 

 

「ねえ、ワンちゃん?」

 

 

「私の好きなひともね、おんなじ髪の色をしているの・・・」

 

 

「犬夜叉って言うんだけど、とっても強いのよ♪」

 

 

「でも、乱暴者で、ひとのいう事を全然聞かなくて、いつも危ない目に遭って

いるの・・・」

 

 

「喧嘩ばっかりしてるし・・・」

 

 

「でもね、私にだけは、とっても優しいんだよ♪」

 

 

「犬夜叉、口下手だから、私の言って欲しい事は全然言ってくれないんだよ?」

 

 

「まだ、好きだって言葉も、愛してるって言葉も何にも言って貰えてないん

だ・・・」

 

 

「可笑しいでしょ?」

 

 

「もう、犬夜叉とは、たくさん愛し合っているのにね♪」

 

 

「女の子ってね、身体だけじゃなくて、言葉でも愛して欲しいの・・・」

 

 

「ふふっ♪」

 

 

「でも、五百年も昔の戦国の世の男の子なんだもの・・・」

 

 

「そんなこと、犬夜叉にはきっと無理よね?」

 

 

シャワーから出るお湯を背中に受けながら、子犬になった犬夜叉はじっとかご

めの言葉を聞いていた

 

 

「さあ、綺麗になったよ、お湯をかけましょうね♪」

 

 

俺だって、かごめがそう言って欲しい事はわかってたよ・・・

 

 

でも、やっぱり言えなかった・・・

 

 

やっぱり、ちゃんと言葉にしなくちゃだめなんだな?

 

 

俺は、かごめにまだ何にも伝えてないんだ・・・

 

 

「・・・」

 

 

俺、このままだったら・・・

 

 

ずっと、子犬のままの姿だったらどうするんだ?

 

 

かごめに、何も伝えられねえままで終わっちまうのかよ・・・

 

 

「さあ、綺麗になったわよ♪」

 

 

でも、ほんとに可愛いワンちゃんね?

 

 

うふふっ♪

 

 

何だか、私と犬夜叉の赤ちゃんをお風呂に入れてるみたいだわ♪

 

 

私たちの赤ちゃん・・・?

 

 

やだっ、恥ずかしい!

 

 

あっ、あらっ?

 

 

「た、たいへん!」

 

 

「ワンちゃん、のぼせちゃったのかしら?」

 

 

部屋に戻ったかごめは、毛布にくるんだ子犬をベッドの下にそっと寝かせた

 

 

小さな身体で、耳をピクピクと震わせながら丸まっている子犬に、かごめの笑

みがこぼれた

 

 

ふふっ、良く寝てる♪

 

 

「あっ、そうだ、みらのに電話しなきゃ!」

 

 

急いで階段を降りてきたかごめを、母が台所から呼び止めた

 

 

「かごめ、もう少しで晩御飯の仕度が出来るわよ?」

 

 

「ありがとうママ♪」

 

 

「犬夜叉くんも、一緒に連れて来てくれないかしら?」

 

 

「それが、犬夜叉まだ帰って来てないみたいなのよ・・・」

 

 

「あら、珍しいわね?」

 

 

「でも、そんなに遠くに行く筈はないから心配してないんだけど・・・」

 

 

あれっ?

 

 

犬夜叉、帰って来てたんだ♪

 

 

再び部屋の明かりを点けてみると、そこには漆黒の髪を頬に纏わりつかせなが

ら無造作に眠る犬夜叉の姿があった

 

 

もう、寝相が悪いんだから!

 

 

ベッドから落ちちゃってるじゃない♪

 

 

かごめの匂いのする毛布に、子犬のように包まりながら寝息を立てている犬夜

叉を、かごめは呆れ顔で揺り起こした

 

 

「犬夜叉、ねえ起きてよ」

 

 

「こんなところで寝ちゃったら、また風邪ひくわよ?」

 

 

「もう日が落ちて、人間に変化しちゃってるんだからね・・・」

 

 

犬夜叉の身体、すごく冷えちゃってる・・・

 

 

もしかして、何も着てないの?

 

 

そ〜っ、ぺらっ・・・!

 

 

「きゃっ♪」

 

 

「い、犬夜叉、もう裸になっちゃって・・・」

 

 

「そ、そんな、まだ晩御飯も食べてないのに♪」

 

 

ドキドキドキッ!

 

 

「こ、困っちゃうな♪」

 

 

「んっ、かごめ・・・?」

 

 

ぺろんっ♪

 

 

あんっ!

 

 

「な、なに、いきなりどうしたのよ?」

 

 

「どうしたって・・・」

 

 

「おまえ、さっきまで俺の身体をいじくり回してたじゃねえかよ?」

 

 

「えっ!」

 

 

「それに、おまえ、俺の目の前で素っ裸になって俺を追い掛け回してただろ?」

 

 

「な、なに、言ってるのよ!」

 

 

「犬夜叉、夢でも見てたんじゃないの?」

 

 

きょろきょろ・・・

 

 

くんくんっ・・・

 

 

あれっ?

 

 

「俺、もとに戻ってる・・・」

 

 

酔いが覚めたのか、薬が切れたのかどっちかわかんねえけど・・・

 

 

やったぞ!

 

 

これで、かごめと一晩中・・・だぜ・・・♪

 

 

犬夜叉、ひとりで百面相してる・・・

 

 

「かごめ、こっちにこいよ♪」

 

 

犬夜叉の瞳の誘いがこれからの先を期待させてしまい、かごめの胸が高鳴って

ゆく・・・

 

 

「えっ、だって、犬夜叉、裸じゃない・・・」

 

 

そんなに、熱っぽく見つめられたら

 

 

私、変な気分になっちゃうよ・・・

 

 

「う、うん・・・」

 

 

おずおずと、ベッドの端っこに座ったかごめを、犬夜叉は優しく抱き締めた

 

 

シーツ越しに伝わる犬夜叉の熱い体温に、かごめの息が微かに乱れるのを首筋

で感じながら、ふたりはゆっくりとベッドに倒れこんだ・・・

 

 

「かごめ?」

 

 

「どうしたの、犬夜叉?」

 

 

「目を瞑ってくれよ?」

 

 

「どうして?」

 

 

「や、やりづれえだろ・・・」

 

 

「ふふっ、犬夜叉のエッチ♪」

 

 

「頼む、目を瞑ってくれ・・・」

 

 

私の上で、赤ちゃんのように無防備な表情(かお)をしている犬夜叉

 

 

ときどき、思い出したようにくれる犬夜叉の甘いくちづけが、堪らなく愛しく

感じてしまう

 

 

「かごめ、重く・・ねえか・・・?」

 

 

「う、うん、大丈夫だよ・・・」

 

 

私を求める犬夜叉の腰の律動が乱れる度に、漏れ出す吐息が微かに荒くなるの

を感じる・・・

 

 

かごめは薄目を開けて、自分に覆い被さっている犬夜叉をそっと覗いてみた

 

 

犬夜叉は口唇を噛み締めて、襲ってくる何かに必死に耐えていた

 

 

犬夜叉が、切なそうに喘いでいる・・・

 

 

私で、気持ち良くなってくれてるの?

 

 

嬉しいな♪

 

 

「かご・・め・・・どうした?」

 

 

「ううん、なんでもない・・・」

 

 

私、犬夜叉の、少し高いこの声が・・好き・・・

 

 

私に触れる、この長い指が好き・・・

 

 

犬夜叉の、少し冷たくて柔らかい、この口唇が好き・・・

 

 

私、犬夜叉が・・好き・・・

 

 

大好きよ・・・

 

 

 

お願い、いぬやしゃ・・・

 

 

もう少しだけ、私のなかに・・いて・・・

 

 

 

 

 

 

「ねえ、犬夜叉、重くない?」

 

 

「いや、かごめの胸があたってて気持ちいいよ♪」

 

 

「もう、ばかっ♪」

 

 

「犬夜叉、今夜は黒い瞳なんだよね?」

 

 

「髪も黒いし・・・」

 

 

「爪も牙もない・・・」

  

 

「珍しくねえだろ?」

 

 

「かごめ、毎月、朔の俺を見てるんだから・・・」

 

 

「でもね、犬夜叉、いつも戦っているか、薄暗い小屋の中でしか見たこと無い

から」

 

 

「こんなに明るいところで、朔の犬夜叉を見たのって初めてかも知れない」

 

 

「そうなのか?」

 

 

「俺は、この姿は誰にも見せたくねえけどな・・・」

 

 

「うんっ・・・」

 

 

「犬夜叉、この姿で、たくさん辛い目に遭ってきたんだもんね?」

 

 

「でも、かごめと出逢ってからは、この姿が好きになった・・・」

 

 

「あの、憂鬱だった朔の夜が待ち遠しくなったんだぜ?」

 

 

「この朔の夜だけは、かごめと同じ人間になっているからな」

 

 

いつもなら、すぐ近くに聞こえる電車の音やクルマのクラクションが、今夜は

とても遠くに聞こえている

 

 

「かごめ、どうしたんだ?」

 

 

「街の音が、聞こえてこなくなったの・・・」

 

 

「もしかしたら・・・」

 

 

毛布に身体を包んだままベッドから抜け出したかごめは、ゆっくりと窓のカー

テンを開いた

 

 

「犬夜叉、見て、雪がたくさん降っているよ?」

 

 

「綺麗だな・・・」

 

 

「ほんと、綺麗な雪ね♪」

 

 

ぐいっ!

 

 

「綺麗なのは、かごめ、お、おまえだ・・・」

 

 

「ど、どうしたのよ、急に、そんな・・・?」

 

 

「どうもしねえよ・・・」

 

 

「ことばで、かごめに俺の気持ちを伝えたいと思ったんだ」

 

 

「かごめに、俺の想いを伝えたかったんだ・・・」

 

 

「もう、逆だよ♪」

 

 

 

「普通はね、そういう事はエッチする前に言ってくれるものなんだよ♪」

 

 

「す、すまねえ・・・」

 

 

「でも、ありがとう」

 

 

「犬夜叉の気持ちが、痛いくらいに私に伝わってきてるよ・・・」

 

 

「そ、そうか?」

 

 

「うん♪」

 

 

シャッ!

 

 

「あんっ、どうしてカーテンを閉めちゃうの?」

 

 

「雪が見えなくなっちゃたよ?」

 

 

「俺は、雪にだって、かごめの身体を見せたくねえんだ・・・」

 

 

いぬやしゃ♪

 

 

あっ!

 

 

「どうしたんだ?」

 

 

「ふふっ、ごめんね♪」

 

 

「さっき、お風呂で銀色のワンちゃんに、私の裸を見られちゃった♪」

 

 

「そういえば、あのワンちゃん何処にいったのかしら?」

 

 

「あれっ、そういえば、犬夜叉の髪も同じシャンプーの匂いがするわ?」

 

 

どきっ!

 

 

「き、きっと、かごめの髪の匂いがうつったんだよ!」

 

 

「ふたりとも、御飯ですよ〜!」

 

 

「か、かごめ、ママさんが呼んでるぜ、メシだってよ!」

 

 

「はーい、いま行きますー!」

 

 

「よしっ、メシを食ったら、またこの布団の中に潜るぞ!」

 

 

「今度は、言葉じゃなくて、またこの俺の身体で、たくさんかごめを愛してや

るからな♪」

 

 

犬夜叉は、乱れたシーツが広がるベッドを横目で見ながら、かごめの口唇を強

くまさぐった

 

 

んっ、んんっ・・・♪

 

 

「今夜は、ずっと寝かさねえからな♪」

 

 

「あっ、や、やだっ!」

 

 

「さっき、したばっかりなのに・・もう・・・?」

 

 

「犬夜叉のエッチ・・・♪」

 

 

 

 

 

 

「いやーっ、美味かったなあ♪」

 

 

「ささっ、さっきの続きじゃ♪」

 

 

「今度こそ、わしに最後までつきあって貰うぞ?」

 

 

「ぐいっと飲りなさい♪」

 

 

「そ、そうか?」

 

 

「じゃあ、一杯だけ♪」

 

 

ぐいっ!

 

 

ぷは〜っ♪

 

 

「美味いっ!」

 

 

はっ、しまった!

 

 

うっかりして、また酒を飲んじまった・・・

 

 

「ああっ、もう!」

 

 

「犬夜叉、またお酒を飲んじゃって!」

 

 

「んっ、あれ、犬夜叉?」

 

 

「もう、また、どこかに行っちゃったのね!」

 

 

「ちくしょう!」

(わんわん!)

 

 

「もとに戻ったのが嬉しくて、またうっかり酒を飲んじまったよ・・・」

(わん、わわん、わんわん・・・)

 

 

「とにかく、急いで酔いを覚まさねえと!」

(わわわ、わんっ!)

 

 

「一晩中、かごめを抱けると思ってたのに・・・」

(きゅううんっ・・・)

 

 

その夜、雪の降りしきる日暮神社の境内を、ぐるぐると走り回る子犬がいた・・・

 

 

その声は哀しげで、少し悩ましい鳴き声が境内中に響き渡っていたという・・・

 

 

「かごめー!」

(わおーんっ!)

 

 

「今夜は仕方ねえけど、明日からはおまえを寝かさねえからな〜♪」

(わふんっ♪)

 

 

てってってってっ・・・♪

 

 

 

 

 

 

「あっ、みらの?」

 

 

「うん、そう、銀色のワンちゃん見つけたよ!」

 

 

「今ね、神社の境内をグルグル走り回っているわよ♪」

 

 

「うん、うん、また後でね♪」

 

 

「じゃあ、待ってるね!」

 

 

「さあ、急いであのワンちゃんを捕まえなきゃ!」

 

 

がらがらっ!

 

 

げっ、かごめが網を持ってこっちに走ってきやがるじゃねえか?

 

 

白い雪の降りしきる神社の境内で、愛する者達のちょっとズレてる逃避行が繰

り広げられたのだった

 

 

 

 

 

 

 

よしっ、誰もいないぜ?

 

 

「う、うん・・・」

 

 

「ねえ、犬夜叉、どうしてこんなに朝早くからお風呂に入るの?」

 

 

「昨日の夜の、小犬騒動であんまり寝てないのに、本当に大丈夫なの?」

 

 

「へへっ、もう朔が明けたからな、何でもねえよ♪」

 

 

「でも、びっくりしたわよ」

 

 

「みらのが連れて来たワンちゃんだと思って捕まえてみたら、いきなり犬夜叉

になっちゃったんだもの」

 

 

「どうも、ママさんに貰った薬と、じいさんと飲んだ酒と、朔と、風邪がごち

ゃごちゃになってああなったみてえなんだ・・・」

 

 

「それならそうって、私にだけは言ってくれたら良かったのに?」

 

 

「すまねえ・・・」

 

 

「ちょっと頭が混乱しちまって、気が付いたら逃げ回ってたんだよ・・・」

 

 

お湯が張られて、湯煙が充満するお風呂のマットの上で、互いに泡だらけにな

っているふたり♪

 

 

「ね、ねえ、本当にこんな事するの?」

 

 

こくり・・・♪

 

 

「小犬のときみてえに、かごめの指で身体中を洗って欲しい・・・」

 

 

「で、でも、今は小犬じゃないでしょ?」

 

 

「どこもかしこも立派な・・・♪」

 

 

きゃっ!

 

 

「犬夜叉、お願いだから前を隠してよ♪」

 

 

「しっ、仕方ねえだろ・・・」

 

 

「かごめの指が、すごく気持ち良かったんだよ♪」

 

 

「なあ、かごめもやってみるか?」

 

 

「あっ、きゃっ、い、いぬやしゃ・・・♪」

 

 

「そ、そこ、だめ・・だよ・・・」

 

 

「だ、だめなのか?」

 

 

「気持ち良くねえのか?」

 

 

「・・・」

 

 

「もう、ばか・・・♪」

 

 

「とっても、気持ち・・いいよ・・・♪」

 

 

  「そうだろ!」

 

 

「これは、絶対に病みつきになっちまうぜ♪」

 

 

「よーし、私もおかえしするわよ!」

 

 

「おっ、おお〜っ♪」

 

 

「か、かごめ、それ気持ちいいぜ!」

 

 

 

 

 

白い湯気の充満しきったお風呂場で、愛する者達のちょっとおバカなスキンシ

ップが繰り広げられるのだった

 

 

窓の外では、清らかに降る白い雪が、ふたりの忍び笑う声を覆い隠すように、

しんしんと降っていた

 

 

とたとたとたっ・・・

 

 

ぶみ〜んっ・・・?

(なんだ?)

 

 

ちらっ・・・

 

 

あっ、あんっ、犬夜叉のエッチ♪

 

 

へへっ、それそれ〜っ♪

 

 

ぶみ〜んっ♪

(朝からお盛んだなあ♪)

 

 

 

 

 

 

 

―fin―

 

 

 

みらのさん、こんにちわんです♪(^^)

みらのさんよりの、キリリク30000hit朔文をお贈り致します!

どうでしょう、リクに近い内容となっているでしょうか?(心配)

そして・・・

朔文の中で、勝手にみらのさんを出演させてしまって、ごめんなさいです♪^^;

どうぞ、これからも仲良くして下さいませね♪

朔朔

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<管理人コメント>

 朔朔さん、お忙しい中、そして体調が悪い時でしたのに、このように素敵な朔文を仕上げてくださり
  本当にありがとうございました!私のリクは、クリスマス・ギャグで、コンセプトはイベント、キス、呪い
  (犬に変身)…でしたよね。ハイ、リクを練りこんでくださって、大満足です。
  サブの『犬で悪いか』を匂わせていただき、犬夜叉の歩き走りの音に、胸キュンでしたv
  
  そして、お風呂での…vこれは、ロマンを感じずにはいられませんっ!泡泡で、××××…

  …今回、犬になった犬君(笑)を、抱きかえるという、なんともおいしい役をさせていただき、嬉しかったですv
  私のぺったんこの胸に、犬君もびっくりしたのでは…
  「…んだ?オマエ男か?」と…(自虐的)。

 朝からも、ラブラブな二人に、幸せな余韻が残りますv…家の人、起きて来ない事を祈ります…。

 こちらこそ、これからも、どうぞよろしくお願いしますv
  
   ありがとうございました。

    ****************************************

      朔朔さんの素敵サイト様『朔雨夜の月』様へは、リンク集からどうぞv

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